第 191回
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米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある


再びリスク許容の局面
  
 5月から6月半ばまでのリスク回避局面は終わり、リスク許容局面が戻ってきたようにみえる。
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT,7月5日付)はザ・ショート・ビュー
(短観)というコラムで「5月から6月前半の嵐は収まり、金融市場は正常化の兆しをみせている」と指摘、次の事例をあげている。
  • UBSのリスク指数(価格変動率、信用リスクのスプレッドなどで算出)がリスク回避の範囲を抜け出した。
  • 5月に大きく売り込まれたアジア通貨が数週振りの高値に復する一方、安全資産として買われた米ドルが対ユーロで再び売られている。
  • 6月半は1トロイオンス 543ドルまで売り込まれた金が 600ドル台を固めてきた。金は伝統的に安全資産とみられてきたが、今回は投機的投資の動きをみせた。
 リスク回避からリスク容認へ。国際商品の人気の変化は5日の国際商品相場の動きにみることができる。
 FT(7月6日付)商品欄の見出しは「話し合い延期が原油を史上最高値に押し上げ」 「開発の行き詰まりを打開するためのイランとEUの話し合いが延期されたため、ニューヨークWTIの8月限は5日、1バレル 75.46ドルと4月24日の 75.35ドルを上回って史上最高値となった」
「LMEのニッケル現物相場は5日、トン2万4000ドルと1988年3月28日の2万3900ドルを上回り史上最高値に達した。主としてステンレス・スチールに使われるが、メーカーは3カ月で60%の高値にあるニッケルを買わざるを得ない立場にある。インドネシアの2鉱山の生産低下、オーストラリア鉱山のトラブルなどが伝えられ、LME在庫の低下と相まって供給不安を呼んでいる。指標となるLME3カ月物も3月末高値に 100ドルとせまった」
 ニッケルではいま鉱山会社間の買収合戦が演じられている。産銅大手の米フェルプス・ドッジがカナダのインコ(ニッケル)、ファルコンブリッジ(ニッケル、銅)の買収を仕掛け、他の非鉄金属大手も参戦の意図が伝えられる(英エコノミスト、7月1日号)
 非鉄金属相場の高騰で現金があふれている鉱山大手は新規開発の2つのリスクを避けるため買収の道を選んでいる。新規開発が実際の生産に結び付くまで長期間かかるため、相場が下落サイクルに入るころ生産開始となるリスク、もうひとつはカントリーリスク。新規開発適地が先進国では乏しくなり、途上国が目標となるが、そこには資源国有化、鉱区権の高騰といったリスクが存在する。
 既存鉱山間の買収合戦では供給増加は限られる。供給天井は低いままに抑えられる。
 商品へのリスクマネーは需給を改めて点検しながら、再び参入し始めたようだ。
 大阪のニッケル先物はこうした国際需給のひっ迫感が出来高増に結び付かない。日本の商品投機マネーの仲介者の過度なまでの勧誘自主規制のためなのだろうか。
 それとも、産業のインフラと言いながら、うの目たかの目で営業姿勢をチェックする行政の過剰規制のためなのだろうか。
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 以下、まだ書き始めていない本のPR。
「商品先物の本を書きなさい。ついては出版社の人を紹介するから」
 04年8月、林輝太郎さんから突然電話が入った。林さんは私が新人記者として商品先物相場を取材し始めた1961年春、相場のイロハを立ち会いの間を縫って教えていただいた先生である。休日に新婚ほやほやの林宅で半日レクチャーを受けたこともある。
 先生の指示とあればいやも応もない。早速、池袋の林オフィスを訪ねた。同友館の菊池公平さんに紹介される。
「商品先物業界で禄を食んでいる身として、商品先物関連本が少ないのは残念だと思わないか。駄本が多いにしても、株にはこんなに関連本があるのに…」
 株関連の贈答本の山を積み上げての林さんの説得である。
 あれから2年。やっと書く決心がつき、本郷の同友館に7月3日、目次案を届ける。
 菊池さんの注文は以下の2点。
 株の投資家で、商品に興味を示す人が増えている。こうした層も意識して書いてほしい。
 限月制にしばられる商品先物には手を出しにくい人でも「商品の時代が続く」とみて中長期の資産運用対象に商品を考えている人はかなりいるはず。商品ファンドの解説は手厚く。
 林さんの指示からなぜ2年の空白があったのか。
 客を消耗品としてしか扱わない一部商品取引員のやり方にいや気が差していたからである。
 儲かる客を増やそう、客と長くつき合える関係を築こう。顧客への対応が変わりつつあることがここ半年実感でき始めた。
「当社は預かり証拠金のうち、3割しか建てられません」
 厚敷をすすめるテレコールが入ってくるようになった。
 仕組みがわかったうえで、やりたい人がやる。そんな手引き書にしたい。禄を食んでいる業界の恩返しになる。仮に3000部売れて、1%の30人が興味を示してくれたら。新規増へのささやかな寄与となる。
 商品先物市場の機能はヘッジとプライスディカバリーである。この2大機能を生き生きと働かせるためには資産運用と現有資産のヘッジ分散を狙う個人投機家が欠かせない。
 儲けなり、財産保全が参加目的だとしても、上場商品の多くは国際商品。商品を通じて地球を知る、勉強する、楽しむ。そんな人への入門書ともしたい。
 で、読者諸氏にお願いがある。こうした視点から本を書いたらどうか、という助言をファックスでいただきたい。小紙の読者といっしょに考え、書く本にしたい。
 取材、執筆時間を作るため「めらの目」は7〜9月不定期掲載とさせていただく。

     (週刊 先物ジャーナル 第849号 掲載)