第 189回
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米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある


投資時計はまだ「商品」

 年末、年始の整理を怠ったせいでわがオフィスの机上はおろか机の下も新聞、雑誌、資料が氾濫している。
 かくてはならじ。整理に着手し始めたとたん「ペイオフ解禁 資産運用こう変る、こう変える」というレポートが出てきた。
 「暇は老化を加速する、少し刺激を与えよう」と考えたのだろうか。M社のFさんからの依頼で確か02年春に書き上げたA4版20ページの小冊子だ。
 整理整とん下手は生来のものだが、思いがけないモノが出てくるとなつかしさもあって、つい読んでしまう。で、結局は整理は先送りとなる。
 小冊子には英誌エコノミスト(01年4月21日号)による“投資時計”が出ている。
 景気は循環するという前提に立って、景気の各局面でなにが最適の投資対象かをみたものだ。
 債券=景気循環の谷の少なくとも1年前、金利が低下し始める直前に他の投資物件を上回るパフォーマンスをみせる。
 株式=金融政策が鏡和の方向に転じる時期、景気の谷の約6ヵ月前に底入れから上昇に転じる。景気が強さを加え、金利が上がり始めると、偉券が下がる一方、株価は増益を受け上昇する。
 商品(不動産)=景気がピークに近づき、インフレ率が上昇する局面で商品(不動産)のパフォーマンスがベストとなる。
 税金=中央銀行がインフレ抑制のため、金利を引き上げるに及ぶと税金が王様となる。
 世界的にみると投資時計は2〜3時を指しているのだろうか。
 投資時計に即したエコノミスト誌の当時の予測は大枠ではほぼ的中している。小冊子には「02年はじめにかけ国際商品ではコーヒーが市場最安値、綿花は15年来安値、鉄スクラップは4年で55%下落といった具合に記録的安値圏にある」という記述がある。
 商品は当時まさに丑三つ時だったと振り返ることができる。
 そしていま、投資時計の尺度に照らすと何時なのだろうか。
 「中央銀行がインフレ抑制のため、利上げに及ぶと現金が王様となる」
 ここ1ヵ月、商品の急反落はこうした解釈通りだともいえよう。6時を回ったという見方だ。
 だが、一方で「景気はピークに近づき、インフレ率が上昇する局面」ともいえる。
 米国の底堅さ、日本の復調…。それになによりも中国、インドの高成長持続とあれば、投資時計は4〜5時ではないのか。05年末〜06年5月中旬にかけての非鉄金属、貴金属相場はスピード違反で、一時急停止を命じられたが、また走り出すとみたい。
◆     ◆     ◆     ◆
 スピード違反を演じた金相場はどうみたらいいのだろうか。
 英紙ファイナンシャル・タイムス(15日付)には金相場と金鉱株の関係についての解説記事が出ている。
 「金相場は1ヵ月ちょっと前の1トロイオンス730ドルから22%下がった。だが、年はじめに比べると約60ドル(12%)上の水準にある。一方、金鉱株はFT金鉱株指数(世界の19大手産金株で構成)でみて、年初の水準に押し戻されている。このことは金鉱株は現物金の相場に比ベ6〜9月先行的に動くという従来の尺度からすると金相場がさらに下がるか、もしくは金鉱株が売られ過ぎで上昇するか、を示唆している」「RBCキャピタル・マーケッツのステファン・ウォーカー鉱山株リサーチ部門ディレターは『金相場がさらに下がるより、金鉱株上昇を見込んでいる』と述ベている。金相場は13日の6%下落のあと14日小戻したが、ニューモント株は3.5%アングロゴールド・アシャンテ株は6%上がった」
 金が金鉱株並みに年初の水準まで、言い換えると12%下がると、14日の565ドルをベースにしてちょうど500ドルを割り込んだ線となる。
 インフレと金利高懸念がリスク回避人気を高めたゆえの金急反落。だが一方で、インフレ高進、ドル下落という2つの懸念がぬぐえない以上、金にさらなる深押しはないのかもしれない。

     (週刊 先物ジャーナル 第846号 掲載)