第 187回
186回 188回
米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある


商品相場医」のNPOはいかが
「樹木医」という新しい生き方
 週刊朝日(6月9日号)の小倉千加子のテレビガイドのページにこんなタイトルが出ている。
 病んだ樹木を再生する樹木医の資格を得たのは子育てから離れた40代の時。塚本こなみさんが、藤の老目木の移植に成功するストーリーが主軸のようだ。
 テレビガイドってなんだろう。おもしろそうだな、と思ってもビデオで前もってとっておくこともできない。
 願えばかなうということなのだろうか。5月31日、NHK衛星放送で夜12時からの逃亡者を見終わり、さて寝るか、でもあと一本のむか、とビールを2階から取って戻り、チャンネルを回していたら、NHK第一放送の「プロフェッショナル」再放送になんと塚本樹木医が登場しているではないか。
「コンバット」、「ローハイド」、「逃亡者」、「アイ・ラブ・ルーシー」
 風呂-ビールをのみながら衛星放送で50分劇を楽しむ。いつの間にかこんなパターンが定着した。番組名は覚えている。登場人物の顔も見覚えているのだが、筋書きは思い出せない。深夜番組といえば、お笑い芸人が独占する民放に比べ、腐ってもNHKにというべきか。
 さて、樹木医である。藤の老木移植ではオートバイ事故に会って首を石こうで固めたという若い助手の話からひらめいて、根の部分を石こうで固めるエピソードが登場する。移植地で見事に花房を垂らす。物言わぬ樹木。手で触れ、観察をこらし、手当てしていく。
 見終わって、考えた。物言わぬは相場も同じ。インサイダー情報が飛び交う株式に比べ商品相場の沈黙度は高い。で、「商品相場医」という考え方はどうだろうか。
 登録外務員がいるではないか。ファイナンシャル・プランナーの資格を取得すればいいではないか。こんな反論もあろう。
 が、商品相場の息遣いを感得し、その生態に通じた外務員卒業生を「商品相場医」と位置付けてみてはどうか。
 黙する商品相場の語るところを一般投機家とともに考え、乗り換え(樹木の移植に相当しよう)、損切り(腐食部分の除去)などの策を講じる。60歳定年で退場する外務員にとって、第一の人生を生かした第二の人生となる。商品先物市場活性化へ向けてのボランティア活動にもなる。
「商品相場医」集団のNPOがあってもいい。
◆     ◆     ◆     ◆
 ブッシュ米大統領は5月30日、ジョン・スノー氏に代え、米証券大手ゴールドマン・サックスのヘンリー・ポールソン会長を次期財務長官に指名した。鉄道経営者出身から相場世界の人物への交代だ。
 ドル高支持なのか、緩やかなドル安容認なのか。訪中、70回に及ぶ中国通、議会で根強い中国元大幅切り上げ要求とどう折り合いをつけるのか。
「財務規律の強化など強いリーダーシップ発揮が求められるが、ポールソン氏には強い武器がある。既に二人の財務長官が辞任している。やってられないと辞任をほのめかすことだ」(英紙ファイナンシャル・タイムス、5月31日付社説)
◆     ◆     ◆     ◆
 で、為替相場はどうなるのか。英誌エコノミスト(5月27日号)は経済の焦点のページで、ビッグ・マック指数を取り上げている。
◆ ハンバーガー・スタンダート

pppが
示すドル
現実のドル
(5月22日)
過小(−)
過大(+)%
アルゼンチン
オーストラリア
ブラジル
英国
カナダ
チリー
中国
ユーロ
インドネシア
日本
メキシコ
ペルー
ロシア
南ア
韓国
スイス
タイ
ベネズエラ
2.26
1.05
20.6
1.60
1.14
503
3.39
1.05
4.710
80.6
9.35
3.06
15.5
4.5
806
2.03
19.4
1.839
3.06
1.33
2.30
1.88
1.12
530
8.03
1.28
9.325
112
11.3
3.26
27.1
6.60
952
1.21
38.4
2.630
-26
-21
-10
+18
+1
-5
-58
+22
-49
-28
-17
-6
-43
-32
-15
+68
-50
-30
 ビッグ・マック指数は各国間の通貨は商品とサービスをたばねた線に収れんするという購買力平価(ppp)理論に基づいている。ビッグ・マックは商品の質が各国のマクドナルド店でほぼ均等なため最も簡便なpppの尺度としてエコノミスト誌が算出してきた。
「ビッグ・マック指数、誕生20年」
 脇見出しにあるように手軽な通貨の尺度として1986年にスタートしている。
「これは便利だ」─それ以来、筆者は愛用するとともに講演や原稿で紹介してきた。
 その算出法は例えば中国元と米ドルの場合、次の通りだ。
 中国でのビッグ・マックの単価は10・5元、米国の単位(ニューヨーク、シカゴ、アトランタ、サンフランシスコの四都市平均)は3・1ドル。米、中の価格が等しくなるためには為替市場レートの1ドル=8.03元ではなく、1ドル=3.39元でなければならない。現行の元は米ドルに対して58%の過小評価となる。
「指数は通貨の正確な動きをはかるためのものではなく、気軽なしかも長期的なテイク・アウト尺度として算出されてきた」
「ハンバーガーは国境を超えて取引されることは少なく、税や家賃などの差でゆがめられることもある。だが、過大評価の通貨が間を置いて下落するなど予知力をみせてきた」
「ビッグ・マック指数ではかると、円が対米ドルで100%の過大評価となっていた1995年以来、円建てのビッグ・マック3分の1値下がり、ドル建てでは3分の1値上がりした。調整は為替でなく、相対価格の変化でも生じる。中国元は米国を上回るインフレ高進で調整されるかもしれない」
 ハンバーガー・スタンダードの表は筆者が資源国、アジア通貨を中心にピックアップしたものだ。アジア、資源国通貨がそろって過小評価となっている。
 表にあるスイス・フラン、ユーロ、英ポンドのほか、デンマーク(54%)、スウェーデン(46%)と欧州勢は過大評価で共通している。
 ビッグ・マック指数からみる限り、ドル預金は敬遠した方がよさそうだ。
   

     (週刊 先物ジャーナル 第844号 掲載)