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米良 周
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある
日本の商品先物の梅雨明け役は賢明な投機家
「商品先物相場がメタルを中心に乱調子になってきたが、一般の投機家にケガ人続出ではないのか」
「こと金に関して一般の投機家の相場上手が目立っている。利食っては押し目を買い直す作戦がうまく働いている」
5月24日、商品先物情報専門会社のMさんと雷音とどろく中で一杯やっていた席での会話である。
05年12月の金1トロイオンス500台乗せの先導役は日本の一般投機家だった。上昇トレンドゆるがずとみた欧米の投機家(ファンド)が、600ドル台、700ドル台と押し上げたというのが今回の金値上がり劇の粗筋といえよう。
5月第3週のメタル相場のかなり深い押し。ケガしたのは目いっぱい張ったファンド。日本の一般投機家は全般には乱高下を巧みに乗り切った、とMさんは語る。
「ヘッジファンドの5月の成績はこれまでのところ2?6%のダウン。商品と新興市場の変動幅が増大した結果だ」(英紙ファイナンシャル・タイムス=FT、24日付)という記事とも符合する。
賢明な投機家が生まれ育っている。
厳しい勧誘規制、商品取引員の相次ぐ経営破たん、取引所の統廃合…。梅雨空にも似た重苦しい日本の商品先物業界。梅雨明けへ雷音は賢明な投機家にあり、という思いを強く抱いた。
◆ ◆ ◆ ◆
5月第3週の商品急反落の背景はなんだったのだろうか。
FTで読み落としていたコラム"ロング・ビュー"の「調整必至の6つのステップ」と題する記事(13日付)が見事に第3週の急反落を予言している。
トレンドの変化が避けられない6つの推論の輪は次の通りだ。
@銅、アルミ、亜鉛、ニッケルの最高値。世界背景の強さとインフレ圧力の高まりを示すとき生じる現象だ。しかし…
A債券市場はパニック状態にはない。米10年債で利回りが4・4%から5・15%に上昇したにとどまる。多分すべてはうまく運ぶことを次の事例は示している…
Bニューヨーク・ダウは今週史上最高値にせまり、世界的なベンチマークであるMSCI世界指数も03年水準に比べ3倍以上になっている。企業業績も上々、配当も引き上げられ、買収ブームも生じている。高い成長だがインフレを招くほどではない。この筋書きが正しいとして、なぜ…
C金は25年来の高値にある。金の信奉者はインフレと地政学リスクへのヘッジ現象だと説く。インフレ論議は債券市場の落ち着きで説得力を欠く。地政学的リスクが上昇要因だとすれば新興国債などリスキーな資産から米国債などへの資金還流が生じるはずだが、そんな動きもない。
金はアジアと中東の税逃れと米国のマネー・ロンダリングで買われているという説もある。だが、金の上昇率は他の商品を上回るものではない。だとすれば、次の推論に行き着く。
D世界的な流動性増加がアセット(資産)価格を押し上げている。景気が強く、しかも与信が拡大しているとき、強いストリーに投資資金は集まり、バブルを形成していく。国際的にみると、ゼロ金利の円を調達して商品から途上国債に至るまで、買い上げていくことができる(キャリー・トレードと称される)。だが、いまや動かしがたい動きが出てきた…
E金融引き締めである。今週、米FEDは16回目の利上げでFED金利を5%とし、利上げサイクルは終わりに近づいた。だが、ECBは6月には利上げの構え、英中央銀行も同様。カギは日本銀行。既に量的緩和は止め、年後半には利上げが予想される。キャリー・トレードの原資がなくなる。
「金利引き上げは、過度なら成長を阻害し、でなければインフレを促進する。すべての資産が安全という事態は考えられない」
◆ ◆ ◆ ◆
ここまで書いたところで、英国の調査会社、GFMSの銀年次報告書「WORLD SILVER SURVEY 2006」が届いた。24日、発表だから予想していたより早い。差し出し日は23日とある。発表前日の発送。
報告書から05年の銀の需給ポイントを抜き出してみる。
〈供給〉
●新産銀は3%増え、1万9954トン、新記録となった。
●公的銀売却はインドの売却が中国、ロシアの公的売却減を補って微増。
●高値にもかかわらず回収銀は3%増の5826トンにとどまった。
〈需要〉
●需要合計は3%増の2万6885トン
●加工需要で産業用は11%増の1万2732トンと過去最高となった。
●ジュエリー加工と銀器は主にインドと中国での伸びで1%増え、7763トン。
●写真フィルム用は9%減の5126トン。デジタルカメラの浸食による。
●推定投資需要は23%増え1478トンに達した。
報告書は銀相場が新産銀の増加と加工需要の緩やかな増加にもかかわらず上昇したのは推定投資需要の浮上にあると指摘している。
「1990年代を通じ投資家は売却サイドに立ってきたが、01〜03年には中立的存在となり、04?05年は、はっきりと需要サイドに転じた。過去の投資家売却の結果、在庫が減った(1990〜2000年で3万トン超)。在庫が減ったため、投資需要増は増幅されて値上がり要因となった」
06年の銀急騰は4月末にアメリカン証券取引所に上場された銀EFT(上場投資信託)によって、市場在庫が一段と細るという見方が事前に広がった結果だ。
この点について報告書は「ETFは一時は裏づけとなる銀現物が市場から隔離され強材料となるが、高値では転売され、弱材料となることもある」と分析している。
ファンダメンタルズは強し、されど…。銀需給報告書をざっと読んでの感想である。
◆ 銀の世界需要、
(100万トロイオンス)
2001
2002
2003
2004
2005
供
給
新産銀
公的銀売却(ネット)
回収銀
生産者ヘッジ売り
投資家売却
606.4
63.0
182.4
18.9
-
596.5
59.2
187.0
-
20.6
601.0
90.6
183.6
-
-
620.4
66.5
181.2
10.0
-
641.6
68.0
187.3
15.1
供給計
870.7
863.3
875.2
878.1
911.9
需
要
加工
産業用
写真フィルム
ジュエリー・銀器
コイン・メダル
加工計
336.4
213.1
286.9
30.5
866.8
340.2
204.3
262.4
31.6
838.5
350.8
192.9
273.8
35.6
853.0
368.3
181.0
247.8
42.3
839.4
409.3
164.8
249.8
40.6
864.4
生産者ヘッジ買い戻し
投資家購入(ネット)
需要計
-
3.9
870.7
24.8
-
863.3
20.9
1.3
875.2
-
38.7
878.1
-
47.5
911.9
銀相場(ロンドン、
1トロイオンス・ドル)
4,370
4,599
4,879
6,658
7,312
(週刊 先物ジャーナル 第843号 掲載)