第 185回
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米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある


商品、理想買いの局面去る? 
「ブーム状態にあるコモディティ(商品)市場で最も需要超過が目立つのはコモディティ・トレーダー自身のようだ」
「金融機関は軽視されていたコモディティ・デスクの強化に走り始めた。経験豊かなトップクラスのトレーダーには7ケタの年棒と同額のボーナスが提示されている」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、5月12日付)には「コモディティ・トレーダー、奪い合い」と題する記事が出ている。
 記事によると、シティー・グループが、コモディティ・トレーダー数を倍増する考えを表明、クレディ・スイス、リーマン・ブラザーズ、ベア・スターンズなどもトレーディング・チーム強化に乗り出している。
「90年代、そしてエンロン破たん直後にはコモディティ・トレーダーのニーズはほとんどなかった。石油とメタルの高騰は金融機関にコモディティ・デスクの拡張をせまっている」
 この記事を読んで二つの感想を抱いた。
 商品相場の天井圏入りを示すシグナルではないのか。高値を競い合う商品。商機拡大の機とばかり、人を増やす。相場同様、天井圏では強気が急増する。
 中長期的には株式、債券、為替に次ぐ、あるいは並ぶ投資部門として、コモディティが認知されてきたあかしではないのか。
◆     ◆     ◆     ◆
 5月15日、投資市場に変調が走った。
「リスク度が高いとされる商品と新興市場からとレーダーが逃げ出した。トルコ・リラ6.1%、南アランド3%、インドネシア・ルピア3.7%と対ドルで下落する一方、株価はインドネシア6.3%、ロシア5.1%、トルコ4.1%とそれぞれ下がった。商品では銅が一時9%安、アルミ、亜鉛も急落、金も5%安。ベネズエラのチャバス大統領の強硬発言(イラン攻撃には対米禁輸)にもかかわらず原油(WTI)も3%安」(FT、16日付)
 15日の変調はなにに起因するのだろうか。ひとつはインフレ懸念の台頭、米FEDの金利引き上げ打ち止め説が後退、ECBは利上げの方向を打ち出し、日銀もゼロ金利解除の機をうかがう。
 低金利の先進国通貨を調達、新興国の株式、債券、通貨を買い進む一方、ブーム状態の商品を買い建てていく。この動き(キャリー・トレード)にインフレ懸念が待ったをかけたという構図だ。
 15日の商品軒並み調整安は個別商品の需給から一歩離れ「需要は増勢、供給のボトルネックは解消しない」という見方に立つ"理想買い"が走り過ぎていた点に反省を強いたのではあるまいか。
 15日、金、銀の急反落に比べ、プラチナ(白金)の調整安は小幅にとどまった。需給実態がより良好だったからであろう。
◆     ◆     ◆     ◆
 そのプラチナについて、英国のジョンソン・マッセイ社は15日、プラチナ族に関する年次報告書「PLATINUM2006」を公表した。
 プレスリリースから要点を抜き出してみる。
●05年のプラチナ需要は前年比2%増。一方、供給は南アの増産とロシアからの供給増で2%増。この結果、プラチナの需要超過は1999年以来、7年連続となった。
●自動車触媒用需要は過去最高。欧州市場での排気ガス規制強化に伴って軽ディーゼル車への触媒フィルターの搭載が進んだことが主因。一方ジュエリー加工用は中国での割安原料パラジウム、ホワイト・ゴールド(金を白色加工)への移行がさらに進んだほか、日本では古いジュエリーのリサイクルでメーカーの購入量が落ちたためだ。
●05年前半、1トロイオンス860〜880ドルで推移し、後半は乱高下しながら上昇した。商品全般の騰勢に衰えがみえないうえ、ドル安見通しも強いため、向こう6カ月に1250ドルの高値が見込める。ファンドの買い建て解消が進んでも最終需要家の根強い買いで下値は1025ドルにとどまろう。
(注=報告書発表の15日、プラチナは1270ドル(ロンドン)と向こう6カ月予想の高値を超えている。「商品全般の高騰に衰えがみえない」との記述にも執筆時点と発表時点のずれが感じられる。JMの強いトーンの見通しを受けてだろう。プラチナは16日には15日比23ドル高)
 JM調べのプラチナ需給の表をみていただく。
 高値で需要が冷えているのはジュエリー加工部門、それにキロバーを中心とする大口投資(日本)は利食いで差し引き供給サイドにある。
 だが、自動車触媒の増勢はゆるがない。環境制御の必要素材だからだ。
 産業用需要は高値にかかわらず、05年は過去最高。?液晶ガラスの増産?エレクトロニクス部門ではハード・ディスク用の拡大、などその商品特性で代替が効きにくいためだ。
 06年も需給ともに拡大するとJMは見通す。理想買いが、現実買いに通じるといえよう。
 原稿を書いている途中、東京工業品取引所から18日、プラチナの期近・期先が上場来最高値更新というリリースが送られてきた。
◆     ◆     ◆     ◆
「商品は買いですよ、商品の時代ですよ」
 こんな大ざっぱは説明が通用する局面は去ったのではなかろうか。
 外務員諸氏は改めて個別商品需給の収集・分析力を問われる。
 顧客の取引店選択も厳しくなる。
   
◆ プラチナの需給 (JM調べ、1000トロイオンス)

2001
2002
2003
2004
2005


南ア
ロシア
北米
その他
4100
1300
360
100
4450
980
390
150
4630
1050
295
225
5010
845
385
250
5110
890
360
270
供給合計
5860
5970
6200
6490
6630


自動車触媒 グロス
      回収
化学
エレクトロニクス
ガラス
投資   小口
     大口
ジュエリー
石油
その他
2520
(530)
290
385
290
50
40
2590
130
465
2590
(565)
325
315
235
45
35
2820
130
540
3270
(645)
320
260
210
30
(15)
2510
120
470
3490
(690)
325
300
290
30
(15)
2160
150
470
3820
(770)
335
360
355
30
(15)
1960
155
470
需要合計
在庫移動
6230
(370)
6470
(500)
6530
(330)
6540
(50)
6700
(70)

     (週刊 先物ジャーナル 第842号 掲載)