投機家はありがたい存在
メタルの快進撃が止まらない。銅、亜鉛、ニッケルがそろって史上最高値を塗り替え、プラチナも史上最高値を更新する。金も1トロイオンス500ドル台乗せ(05年12月)↓600ドル乗せ(06年4月)↓700ドル台乗せ(同5月)と三段上げを演じている。
いくらなんでも速度違反ではないのか。
英紙ファイナンシャル・タイムス(FT)には高値警戒のコメントが目立ち始めている。
「石油とメタル市場にバブルを懸念する声が出ている。バークレー・ハザウェーの先週末(5月6日)の株主総会でウォーレン・バフェット氏もバブル懸念を表明した。『小麦、トウモロコシ、大豆など農産物にバブルがあるとは思わない。だが、メタルと石油ではとてつもない値段が出ている。大きな値動きをみせる資産にはまずファンダメンタルズが投機を引き寄せ、次の段階では投機が支配的となる』、『それは舞踏会でのシンデレラのような危機的状況をもたらす。真夜中を過ぎれば、すべてはカボチャとハツカネズミと化す』」(FT、9日付)
「キャピタル・エコノミックスのシニア・エコノミスト、サイモン・ハイレイ氏は『商品の価格はいまや持続可能な水準を上回り、急激な修正安を演じる可能性が高まっている』と指摘、『高値は需要を冷やし、同時に投資拡大で供給が増えていく。投機的買いと投資家の商品への資産分散が相場を押し上げてきたが、その巻き戻しでいずれ下落を加速する。07年末までにメタルは40%反落、原油は1バレル45ドルに落ちると予測する』と述べている」(FT、10日付)
「世界最大級の貴金属トレーダー会社(ドイツのヘラユース社)のヘルムート・エッシュウェイ社長はバブル状態の金と銀の高値には持続性がないと述べている。『真っ先に銀が下がり、金もこの水準(700ドル台)は維持できまい。プラチナは産業用需要に支えられて史上最高値は妥当性がある』、『金には大きな在庫があり、プラチナは在庫がない』」(FT、11日付)
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「ヘッジファンドなど投機家が値上がりの大きな部分の責めを負う。かれらはバントワゴンに飛び乗るように買い進む」(エシュウェイ氏)。
で、投機家はやっかい者なのだろうか。
FT(6日付)には「投機家はありがたい存在で、決してやっかい者ではない」(Speulators are a blessing not a curse)というタイトルの社説が載っている。
要約してみる。
●商品の投機家は人気投票で勝つことはない。月曜(1日)にカーギルのトップ、ウォレン・スターレイ氏は商品市場でのヘッジファンドの投機が警告を発した。BPとシェルの首脳も最近、石油価格は投機的活動で押し上げられていると述べている。銅の記録破りの高値で産業界は投機を指弾するのも不思議ではない。
●だが投機家は自ら資金を投じてリスクを負い、我々に未来を教えようと試みる、という大事な役割を背負っている。うまくいく投機家は将来の供給不足と高値を見込んで先物市場で買い建てるか、在庫を持つ。
●さらなる高値を予想して今日銅を保有したヘッジファンドは最も必要とされる時期に売りに回り、銅生産者に投資をうながして高値の歯止め役を果たす。個の利益追求が公共の利益につながるという典型例といえる。
●市場操作と投機は異なる。市場操作は有害、かつ倫理にもとり、違反行為である。1979年のハント兄弟の銀買い、1990年代の住友商事の浜中氏による銅のスクイーズは法で罰せられる前に市場に罰せられ、破たんした。
●市場がより大きく、流動性を増し、市場管理者がより情報に通じるようになると、市場操作よりも、能力を欠く、不適格参加者の参入を懸念すべきだ。
●ナイーブ(うぶで単純な)な投機家がいろんな商品に手を出し、高値を買い、安値を売ると価格変動性が増大し、誤った価格情報を発信する。ただ、そうした参加者自身が最も大きいダメージを受ける。
●能力ある投機家はいま我々に、将来に備え資源を蓄え、新しい供給源と代替商品を求め、消費効率を高めよ、と教えている。
「投機は最も尊敬できる職業のトップには立てないかもしれない。これはけしからぬことだ。我々はスマートな投機家をかつてよりも必要としている」
社説の結語である。
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ナイーブを手元の三省堂コンサイス英和辞典で引いてみる。
純真な、あどけない、素朴な、愚直な、うぶで純真な、世間知らずの、無技巧(稚拙)な
日本の商品先物市場の参加者にはスマートな投機家に比べ、ナイーブな投機家が多過ぎはしないか。スマートな投機家の発見、育成がいまこそ欠かせないと思う。
筆者自身世間知らずで無技巧、ナイーブな超小口投機家に分類できる。かくてはならじと連休中に丸紅経済研究所の柴田明夫さんの「資源インフレ」(日本経済新聞社)を読んだ。
「ナイーブを脱し、スマートへ」商品投機家の手引き書としてもおすすめする。 |