第 182回
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米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある


弱気が消えた?商品投機

「ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い」
 とかく、人名は読みにくい。前号のこの欄でペルーの大統領選挙で優勢を伝えられるオランタ・ハマラ候補と書いたが、日本経済新聞(4月11日付)のリマ発の記事によるとオジャンダ・ウマラと発言するらしい。英語表記はOllanta Humara。
 前号でウマラ候補の主張に象徴される資源ナショナリズムが鉱産物の増産余地を挟めていると記したが、供給サイドでもうひとつの供給制限を書きもらした。
 それは開発・生産コストの急上昇である。
 @エネルギーと開発・生産機材の高騰。
 A環境保全コストの上昇。鉱石採掘─地金精錬の過程で生じる水、大気汚染は先進国だけでなく、途上国でも周辺居住民の抵抗が強まっている。
 B労務費の上昇。高値による収入増は鉱山労働者の賃上げ要求を強め、各鉱山でストによる操業停止が増える。
 英誌エコノミスト(4月8日号)に「金はいりません、私たちはルーマニア国民です」と題する記事が出ている。
「2000人の雇用と20億ドルの投資を約束する外国企業は貧しい国にとって通常は歓迎される。だが、ルーマニアへの金鉱山投資はそうではない」
 記事のポイントを整理してみる。
・カナダの鉱山会社ガブリエル・リソーシスは1997年以来ルーマニア北部のロシア・モンタナ地区で金鉱開発を試みようとしてきた。
・共産主義政権下にあっては同地区の鉱業は環境保全は無視されてきた。カドミウムや他の重金属に汚染されている。2000年に生じたシアン化物流出はハンガリーに流れ込む川を汚染した。普段は物事に無頓着なルーマニア国民もことシアン化物がからむ新鉱山開発計画に過敏な反応を呈するようになった。
・ガブリエル・リソーシスは1億6000万ドルを準備段階で投じ、ハイテクと超クリーンな方法で開発を進めるとし、反対論者を説得しようとしている。アンチ・グローバル論者、グリーン信奉者、それに反対は公徳心に訴えるとする人々、など反対勢力は説得に耳を貸さない。
・開発予定地の市長は鉱山支持者で最近再選された。反対派の候補の得要率は10%以下だった。ルーマニアの善良ぶる人々は外国企業たたきを好むかもしれないが、直接に関連する人々の考え方は違う。
 前記の生産コスト上昇のBのケースでは周辺住民の抵抗の強さを指摘した。が、ルーマニアの例では当該地区の収入全国平均に比べ3分の1(月間270ドル)、失業率50%。地元は雇用機会の拡大の機ととらえている。
 地元住民ではなく、ルーマニア国民全体の理解を得るキャンペーン費用が鉱山会社にのしかかる。コスト上昇要因には違いない。
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 非鉄金属、貴金属高騰の背景に供給制約要因ありと2回にわたって書いてみた。
 銅、亜鉛、プラチナが市場最高値。金25年3カ月振り、銀22年8カ月振りの高値。原油も1バレル70ドルにせまるという11日の相場付きはいささか走り過ぎではなかろうか。
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、3月12日付)商品欄の見出しは「非鉄・貴金属相場、"フェア・バリュー"超える」
 フェア・バリュー(公正な価値)とはなんだろう。
 記事にはUBSのジョンリード氏のコメントが出ている。
「非鉄・貴金属相場は需要と供給の関係に基づいたフェア・バリューをかなり上回っている。だが、過去2年の経緯は投資と投機資金の流入は相場を需給原則に立つフェア・バリューをかなり上回る線に押し上げることを教えている」
 12日付FTではマーケット・インサイト欄でも国際商品の急騰振りを取り上げている。
「商品市場の反動安のきっかけに警戒せよ」というのが見出し。
 記事にある調整安のきっかけ要因を列記してみる。
○予想されたより高い米国と欧州の利上げ、それに日本の金融緩和の停止は金融市場の流動性を低め、商品、株式市場に影響を与える。
○米国の住宅部門の鈍化の兆し。
○中国の成長鈍化。投資主から消費主導への政策変更で国際商品多消費パターンが弱まる。
 ここまではいわばマクロ要因。
 次は市場要因ともいえよう。
○調整安の引き金は弱気のお手上げが引く。みんなが弱気なら強い相場に転じ、みながみな強気なら弱い相場に転じるというのが市場の持つ長い歴史が語るところだ。いまもっともっと上がるという合唱の前に弱気のかげは薄い。
○投資家の商品への資金流入の先細り。ゴールドマン・サックス指数など商品指数の構成品目によって買い建てていくインデックス投資は 800億ドルに達したとみられるが、4年に及ぶ高いパフォーマンスの末、今日に至る今年のパフォーマンスはマイナス 2.5%となった。
 これは「ネガティブ・イールド・ロール」といわれる現象のためだ。期先限月が期近限月より高い結果生じる。期近限月が落ちたら次の限月に乗り換えていく手だてが効を奏しなくなった。
 前者は「万人が万人ながら強気なら、たわけになりて米を売るべし」(三猿金泉秘録)に通じる。

     (週刊 先物ジャーナル 第838号 掲載)