角を矯めて牛を殺す
「シンバブエにとって事が思い通り進んだことはそうはない。だが、世界第2位のプラチナ鉱床の上に座し、しかもプラチナ相場は急上昇している。普通なら好機といえよう。残念ながら気まぐれ、かつ独裁的な政府の手によってこの好機の芽は摘まれようとしている」
英誌エコノミスト(3月18日号)の「プラチナのガチョウを殺す」と題する囲み記事の書き出しである。
記事のポイントを整理してみる。
○3月3日、ジンバブエ(アフリカ南部の共和国)の鉱業相はすべての外国企業は株式の51%を政府に移し、かつその半分は補償しないと発表した。ジンバブエのプラチナ鉱床は世界1、2位の生産者である南アのアングロ・プラチナ、インパラ・プラチナが重要拠点として開発投資を進めてきた。
○ジンバブエでプラチナが産出されたのは1994年からで、05年の推定生産量は15万トロイオンス(4.65トン)で世界第4位。南ア勢のほか、その豊かな鉱床を目ざし、新たな外国企業も進出を準備していた。(筆者注=英国の大手プラチナ加工・流通業者の05年推定データによると、プラチナの生産量は@南ア159.3トンAロシア26.7トンB北米10.6トン?その他8.4トン)
○だが、ジンバブエの新政策で外国勢の開発計画は棚上げとなる。外貨不足の当局の手による生産拡大はおぼつかない。
○農産物収入は干上がり、鉱産物が主要外貨獲得源であるだけにプラチナを景気回復のテコにしようと考えたのだろう。が、政策を変更しない限り、プラチナによる収入増の目論見は果たせず、逆に経済は奈落の底に落ちよう。
「プラチナのガチョウを殺す」という見出しは「金の卵を産むガチョウを殺す」をもじったものだろう。日本語ならさしずめ「角を矯めて牛を殺す」に当たる。
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ことは需給規模が小さなプラチナの事例にとどまらない。
非鉄金属、金、銀と地下資源に恵まれ、鉱産物大国ともいえるペルーの大統領選挙で優勢を伝えられるオランタ・ハマラ候補は英紙ファイナンシャル・タイムス(FT3月30日付)のインタビュー記事で「21世紀の国有化を目ざす」と述べている。
具体的には鉱区使用料を免除されていた外国の鉱業資本との契約を見直すとし、米国のニューモント社が支配する北部の金鉱山の例をあげている。
「大企業と守旧派政治家が貧困と機会損失を招いてきた。新憲法では富を産み出すのは国の役割とし、外国企業は戦略的ビジネスから排除する。民族主義が国の土台であり、神が与え給うた地下資源は我らが子孫に伝承すべきである」(エコノミスト誌3月25日号に紹介されているハマラ氏の考え方)
「ベネズエラ、エニとトタルから油田接収」(FT、4月4日付の記事見出し)
「世界第5位の産油国ベネズエラのエネルギー相はイタリアのエニ、フランスのトタルが操業する油田を4月1日付で接収した。外国エネルギー企業はベネズエラの国営石油会社が主力を握るジョントベンチャーに契約運営分の32%を拠出するよう求めていた」
民族主義の台頭と外国資本忌避。地下資源に恵まれ、あるいは開発余力の大きい国々にこうした流れが広がり始めている。
地下資源の開発に着手して操業に至るまで長い期間を要する。この間、豊富な資金と高い技術力も欠かせない。国内資源を採掘し尽くし、あるいは環境・労働コストの上昇で収益確保が困難になりつつある先進国資本が資金と技術を提供、途上国の資源を開発していく。こうしたいわゆる国際分業体制がほころびをみせ始めている。
「民族主義の台頭→資源囲い込み策→西側資金・技術の導入停滞→増産余力低下」 高値を競い合う非鉄金属、貴金属、原油。二進一退で騰勢を続ける背景には増産をはばむ産出国の資源囲い込み策の広がりがあるようにみえる。
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コメ先物不認可について鍋島氏が反論を書いている(先物寸言)。付言することはないがあえて書く。
「ジンバブエの気まぐれで独裁的な鉱業政策と相似している。先物市場の持つ競争価格提示、ヘッジ手段提供がなんで生産調整をそこなうおそれがあるのか。生産者、流通業者、消費者(投資家)がそれぞれ独自の判断で参加して形成させる競争価格よりすぐれた価格指標はどこにあるというのか。生産調整を進めるに当たって発生するリスクはだれが負うのか。税金なのか。市場という角を矯めれば健全なコメ作りという牛もやせ細ることになる」
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