平成18年4月3日(月)(毎週月曜日発行)第836号
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  主 な 紙 面 ―
◇コメ先物、不許可の判断 
 食糧部会・複数委員が疑問を指摘 置き去りにされた流通と消費
◆MMGアローズが違約 委託者財産は満額返金の見通し
◆コーワFが4月末に自廃 すでに清算業務に着手
◆ネット取引の落とし 手放しで喜べない取引量の増大
◆“先物オタクのススメ”合理的でない投資家と市場
◆英紙、コメ先物不妊かで「農家の圧力を確認」
◆ユニコム、持株会社移行で準備会社を設立


コメ先物、不許可の判断 
食糧部会・複数委員が疑問を指摘 置き去りにされた流通と消費 
 農林水産省の中川昭一大臣は28日、東京穀物商品取引所と関西商品取引所が申請していたコメ先物の試験上場に係る定款変更の認可申請について「生産調整の円滑な推進、ひいては生産に著しい支障を及ぼすおそれがある」とし、不認可の判断を下した。また同省の岡島正明総合食料局長は、翌29日に開かれた食料・農業・農村政策審議会食糧部会(部会長=八木宏典東京大学大学院教授)で、改めてコメ先物市場の開設を認めない方針を確認した。上場否認に商品先物業界関係者の落胆の色は濃いが、今回の判断には食糧部会に出席した複数の委員からも疑問を呈する声が上がっている。
「正直、驚いている。いままでの議論はどのように機能したのか。これまで先物取引導入に否定的な意見は多数ではなかった。(議論が)どのように受け止められたのか確かめたい」
 食糧部会委員の一人で宮城大学大学院事業構想学部学部長の大泉一貫氏は憤りを隠さなかった。
 この日の食糧部会で岡島局長が不認可の唯一の理由として説明したのは、先物市場と現行のコメ政策との整合性の欠如だった。それが結果として「(コメ)生産に著し
い支障を及ぼすおそれがある」との判断につながった。
 商品取引所法は「期限付商品市場(=試験上場)」の開設について、?先物取引を公正かつ円滑にするために十分な取引量が見込まれない、?上場商品構成物品(今回の場合はコメ)等の生産および流通に著しい支障を及ぼし、または及ぼすおそれがな
い??場合に「主務大臣は(申請を)認可しなければならない」と定めている。
 一方で農水省は平成22年度にコメ作りの『あるべき姿』の実現を目指し、コメ政策改革を推進している。あるべき姿とは「効率的かつ安定的な農業経営(担い手)が生産の太宗を占め、水田農業の望ましい生産構造が実現していること」「経営判断の基礎となる需給・価格情報を踏まえ、農業者や産地が、自らの判断により適量のコメ生産を行う等、主体的に需給調整が実施されていること」だ。
 その過程にコメの「生産調整」があり、平成17年度産米では農家の88%(296万人)が生産調整に参加し、12%(42万人)が不参加という現実がある。農水省としては不参加農家を、政策的に参加へと「誘導」(岡島局長)する考えだ。
 その際に、コメの自由な流通を前提とする先物市場の創設は「生産調整の推進に支障をきたす」(生産調整方針作成者アンケートより)との危惧を抱かせる。また、そもそも本末転倒なのだが、農水省が先物市場を認めた場合には「生産調整に協力できない」とあからさまに告げる農家も少なくない。
 いずれにせよ農水省としては『あるべき姿』実現のための政策を第一義に挙げ「他の政策もこれと整合的に展開される必要がある」との理屈を展開。すなわち先物市場は「生産に著しい支障を及ぼす」との結論を導いている。
 しかし商品市場認可・不認可の判断では「政策的整合性が問われているのではない」(竹内克信委員=証券保管振替機構社長)ことは明らかだ。竹内委員は「論理的かつ正面から誠実に説明してほしい」とした上で「生産調整の話と(先物取引を)論理的に結びつけるのには相当の無理がある」と批判した。
『岡島理論』に納得ができないとしたのは、立花宏委員(日本経済団体連合会専務理事待遇・常務理事)、岩田三代委員(日本経済新聞社生活情報部編集委員)も同様だ。
 立花委員は「法律(商取法)の条文の中にわざわざ『著しい』という表現があるのだから、不認可とするならなぜ『著しい』のか(農水省は)立証しなければならない」と発言。
 岩田委員は「『誘導』への支障が大きな理由なら説得力に欠ける。『生産現場が先物取引のシステムを理解していない状況で、指標の先物価格を見たらとんでもない生産変動が起きる』と説明されればまだわかりやすいが、この(岡島局長の)説明では一般の人も理解できないのではないか」との疑問を投げかけた。
 一方で、農業団体代表委員は「生産者の一人としてほっとしている」(今井延子委員=全国女性農業経営者会議会長)と不認可判断を歓迎している。
 しかし生産は流通と消費なしには成り立たない。今回の判断では生産者以外の当業者が求めていたリスクヘッジ・ニーズが置き去りにされていることも「苦しい説明」(竹内委員)の印象を増幅させている。
 農水省は「釈明のための証拠を提出する機会を与える」として、4日に東穀取と関西商取の意見聴取を行う。


      (2006年4月3日―第836号)