国内商品先物市場の出来高不振をよそに、世界のデリバティブ市場は右肩上がりの急成長を続けている。FIA(全米先物業協会)のまとめによると、世界のデリバティブ取引所の先物・オプション取引の合計出来高は2000年の44億枚から、わずか3年後の04年には88億枚へと倍増。05年も順調に推移して98億9978万枚と100億枚の大台に迫った。
地域的な分析では、アジア(残念ながら日本の商品先物市場を除く)と米国の急激な伸びの一方で、欧州の一部と南米の取引所群が若干のマイナスとなった格好だ。
昨年はアジア地域ではKOSPI(韓国証券指数)先物と同オプションを擁する韓国取引所(25億9308万枚)が世界首位の座を堅持。新興の大連商品取引所(9917万枚=17位)と台湾先物取引所(9265万枚=18位)も存在感を高めている。
ちなみに東京工業品取引所は6181万枚で23位、東京穀物商品取引所は2560万枚で34位の位置づけだ。日本勢の足を引っ張っているのはオプション取引の不活発で、先物取引に限定して順位をつけるとそれぞれ世界の10位と21位に浮上する。
デリバティブ世界に空前の活況をもたらした主因が電子取引(スクリーン・トレード)の隆盛にあることは論を待たない。
ITに裏打ちされた新たな取引システム(プラットフォーム)を開発した取引所、その新たな舞台で合理的かつ有効な取引スタイルを味方につけ、今では『Eローカルズ』と呼ばれるようになった新しいタイプのトレーダーの大量出現。そうした要素が重なり合って『伝統的な』市場構造を一変させた。
取引所の電子取引導入は、ピットを離れた『エレクトロニック(E)トレーダー』を生み出した。いまやパソコンは「どこでも取引所」だ。トレーダーはプロ・アマ(個人投資家からCTA、ファンド・マネージャーまで)を問わず、世界中の流動性に優れた市場を容易に駆けめぐることができるようになった。
さらに取引所とトレーダーの仲介役を務める電子取引ブローカーの存在がある。ブローカー間の競争はトレーダーが最も気にする手数料の廉価を実現した。
こうした利便性ゆえにEトレーダーたちは電子取引を利用し、取引所は彼らを取り込むために利便性と市場の魅力を高める努力を重ねる。取引所とEトレーダーにとっての好循環の出現。世界的な取引所間競争がこれに拍車をかけていることも見逃せない。
では電子取引にはどれほどの需要があるのか。伝統的な手振りの取引仕法オープン・アウトクライにこだわり続け、手振りと電子取引を併用する米国シカゴの2大取引所では、実はすでに逆転現象が起きている。

92年に電子取引「グローベックス」をスタートしたシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の昨年の総出来高は約5億4500万枚。うちグローベックスは3億8600万枚と全体の約7割が電子取引による。この間の軌跡を描いたのが『グローベックスの1日平均出来高推移』で、00年以降の急成長が目をひくはずだ。
シカゴ・ボード・オブ・トレード(CBOT)でも同様の現象が見られる。今年3月16日までの総出来高は1億6318万枚。うち約7割が電子市場『E-CBOT』で取引されている。ただCBOTでは、農産物市場は依然としてオープン・アウトクライが支配的だ。
今年の出来高2138万枚中、E-CBOTが農産物取引に占める割合はわずか2・7%。しかしそこには政治的な理由がある。守旧派のフロアトレーダーたちの反対により電子取引の稼働時間が夕方の6時30分から翌朝6時までに限られていたからだ。
金融商品は1日22時間の取引。もちろんオープン・アウトクライの時間帯でも電子取引ができる。サイド・バイ・サイドと呼ばれる方式で、「ピットの場味を読みながら電子取引できる」とフロア上がりのトレーダーたちに人気がある。
ただCBOT守旧派たちも現行の方式からの脱却を余儀なくされる日も近い。それが3月9日に実施された会員投票の結果で、穀物市場でのサイド・バイ・サイドの誕生を示唆している。
市場構造の変革は、ある意味で伝統との闘いといえそうだ。