第 180回
179回 181回
米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある


食は資源か、文化か
 
 3月19日、青梅線御嶽駅前の日本旅館に投宿。恒例の梅見の会出席が目的。
 一番乗りで手持ち無沙汰のまま3年前のことを思い起こす。
 テレビには米軍のバグダット向け快進撃の映像。歴史学者で大学名誉教授のKさんがぽつり。
「抵抗らしい抵抗がないということは無気味。民のうらみはこもっているのではないか。事後処理は手間取る」
 あれから3年。イラクは内戦の将相を呈している。原油に上乗せされたイラクの政情混乱プレミアムは一向に消えない。
「原油は開戦必至の段階で米軍圧勝を見込んで大きく売り込まれている。イラク敗退-新政権による復興施策-原油増産までを相場は織り込んでいる。相場の先見性あなどるべからずです」
 記憶に残るわがコメント。いまとなっては気恥ずかしい限りだ。Kさんは次の年に講演先で急逝された。
 K教授は日露交渉史がご専門だった。世界史からみたいま、をいまこそお聞きしたい。
 思い出にふけっていると著述業のKさん登場。早速ビール。
「05年のこの回で金10枚買い建てているとうかがいましたが戦況はどうですか」
「大きく利が乗ったとたんの12月の3連続ストップ安。あれはなんだったんだ。あの突然のルール変更にはいまだに納得がいかない」
「金利がない同然の円を借りて、ドル建て金を買っていたファンドが、円高転換で売り急いだこともある。市場はある意味で気高さを持つ存在。市場にはさからえない」
「でも私の窓口の人によると市場管理委員会の動きに透明性が欠ける点があったと指摘している」
「市場管理委員会は市場の気高さを維持する存在。現物、海外の他市場の動き、などを分析して過熱とあれば手を打つ。相場の現状判断はひとつではないのだから当然不満も出てくる。ただ、Kさんは大局張り。しのび寄るインフレが買い根拠だったのだからへこんでも元に戻ったでしょう」
 Kさん無言。
 Kさんとの問答でこう考えた。
 その@=市場管理委員会の会議録は一定期間後、発言者名とともに公開する必要がある。海千山千の機関投資家ならいざしらず、市場管理の考え方、手順を明示することは個人投資家の市場への信頼性向上に寄与する。
 そのA=個人投資家主体という日本の商品先物市場で、個人投資家の意見を吸い上げる機会はあるのだろうか。相場無縁の学識経験者は個人投資家を代表しているとは決していえない。
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 20日、快晴。吉野梅郷での観梅。
 紅梅は6分、白梅は3分咲きといったところか。抜けるような青空。たまさか、千切れ雲が飛ぶ。
 青空の下、梅を見ながら飲む酒のうまさよ。70歳代2人、60代3人、30代の女性2人。煙草のみ5人(女性1)。愛煙愛酒集団の納める税金はなにに使われているのだろうか。
「老人天国というが平成17年の所得税から老年者控除50万円が消えた。知人で煙草を止めたら、糖尿病になって、酒も禁じられた人がいます。老いたら煙草・酒税を通じ社会還元に努めるのも手」
 改めて乾杯の音頭を取る。
 帰途、「食がわかれば世界経済がわかる」(榊原英資著、文藝春秋刊)を読み継ぐ。
 第5章ファストフードの侵略には食をベースに国を仕分けしている件りがある。
「食は資源なり」イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア
「食は文化なり」中国、日本、フランス、イタリア、スペイン、アルゼンチン、etc
 アングロサクソン国家=ファストフード、貧しい文化、金融業、システマチック、効率主義、グローバリゼーション
 アジア&ラテン系諸国=スローフード、豊かな食文化、製造業、手工芸的、品質主義、ローカリゼーション
 「食」の世界をつぶさに見ていくと、近代西欧文明の限界と問題点が浮かびあがり、かつ、文明の西から東への回帰現象が垣間見えてきます。食の世界でも「リ・オリエント」現象が起こってきているようなのです。
 第7章リ・オリエントの一節である。
 御嶽駅前の旅館の2食(夕、朝)はまさに日本料理の典型だった。炭火で焼いた魚、特製の豆腐料理、山菜とりどり…。夕食は確か8種、朝食は6種の料理が出ていた。
 女将の目がこわいので箸は付けたが、ほとんどを残した。
「ファストフードの衰退」と「日本食の世界的ブーム」(前出書の帯)
 筆者は戦後の飢えを知る世代のせいか、日本食よりファストフードを好む。
 寿司より日本版ファストフードの立ち食いそばか、かつては吉野家の牛丼を選んだ。
 あとは自宅。やっとたどりついた最寄り駅構内のコーヒー・ショップでコーヒーとホット・ドッグを注文してこう考えた。
「それぞれの国にそれぞれの人々の好みがある。二元的仕分けはいかがなものか」
「飢えたアフリカ大陸を救うのは『食は文化』ではなく『食は資源』論ではないのか」
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 22日、5日振り出社。英紙ファイナンシャル・タイムス4日分に目を通す。
「OPEC(石油輸出国機構)、ロシアの石油輸出鈍化で警告」(18日付)
 かつてロシア最大手級のエネルギー会社、ユーコスへの国家訴訟でロシアの石油輸出大幅鈍化が見込まれる。2年前まではロシアの増産が中国の需要の伸びにほぼ見合っていたが、そのバランス効果が消える。
「銅さらなる高値を目ざす」(21日付)
 LME、上海先物取引所、COMEXの在庫が合わせて20万トンと供給の4週分に過ぎないとして史上最高値更新(LMEの3カ月先物、1トン5,165.5ドル)。
「銀、ishares上場認可で22年振り高値」(22日付)
 銀相場は21日米SECが銀の上場投資信託(ishares銀トラスト)を認可したことを好感一時1トロイオンス10.50ドルと22年振りの高値となった。
「ICEに新規上場商品登場」(22日付)
 インターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)は21日、米国のヒーティングオイルとガソリンを4月に上場すると発表した。ICEは2月にWTIを上場、1日当たりの出来高は6万枚に達している。ICEは05年4月、オンライン取引に移行して以来、エネルギー関連商品のNYMEXに対するシェアは30%から40%に上昇している。
 商品先物取引の"食"は情報。情報という名の食はアングロサクソンが収集、加工、発信の中心といえよう。

     (週刊 先物ジャーナル 第835号 掲載)