第 173回
172回 174回
米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある


メタル高、開発・操業コスト上昇に基因
 訂正 1月30日付の当欄で2つの誤まりを侵しました。@06年11月〜12月半ばまでの金の棒上げを主導…とあるのは05年11月〜12月半ば…の誤まりでしたA世界の金需給の表の柱で05年前半は04年後半、04年後半は05年前半のそれぞれ誤まりでした。おわびして訂正します。
 指摘していただいた読者のおすすめに従って表は再録いたします。
「小食と煙草と酒とコーヒーのおかげで目以外はそれほど劣化していません」
 一部の友人あて賀状にこう書いたが、目の劣化が校正力の低下を招いているのだとしたら売文業者の資格を欠く。深く自省する次第だ。
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 貴金属の高値に向けての進軍が止まらない。
 プラチナ(白金)は1月31日、ニューヨーク先物期近で1トロイオンス1089.9ドルを付け1980年3月の最高値1085ドルを上回り、史上最高値を更新した。金も1981年1月以来、銀は1984年3月来の高値となっている。
 貴金属がそろって大相場を示現した1980年初頭を振り返ってみる。1979〜1980年は世界的にインフレが高進する一方、米ドルが購買力を失い、インフレヘッジ財として貴金属に世界の目が向いていた。
 OPEC(石油輸出国機構)の原油大幅値上げ、さらには旧ソ連のアフガニスタン侵攻が重なり合い国際的に物情騒動たるものがあった。
 1980年初頭へかけての貴金属の騰勢を主導したのは銀。テキサスの大富豪であるハント一家が「新産銀だけでは工業用需要を賄えない銀、工業用だけなら新産金を持て余す金を見比べると、1対30の銀は割安という金銀比価(同一重量の価格比)論に立って現物、先物市場で銀を買い進んだ。
 金銀比価が1対17になった80年初頭の時点でハント一家の中には当時の上位産銀5カ国合計の約2億トロイオンスの銀が収まったといわれる。
 銀次いで金、遅れてプラチナが最高値を付けた80年高値と06年1月末値を比べてみよう(いずれもニューヨーク期近、1トロイオンス・ドル)
 ハント一家の銀買い集め作戦はグリーンスパン氏の前任だったボルガーFED議長による強烈な金融引き締め、売り方が多数を占めた取引所幹部による買い規制の強化などによって破綻する。もちろん超高値が需要を破壊していったことは大きい。
 今回の銀急騰のきっかけは金の上昇を追っている面もあるが、銀のFTF(上場投資信託)の登場期待という強材料が働いている。銀のFTFはバークレイズ・グローバル・インベストメントが計画しているもので、現物は別途に分離保管されるため、投資家は現物保管、受け渡しなどの手間がかからずに取引できる。
 先発の金のFTFは米国中心に伸び、05年末現物換算で425トンの規模に達し、金を押し上げる役を果たしている。
 だが、銀FTFがスタートしても、ハント一家のような強力な買い仕手の手中に銀が収まったことにはならず、個別散在的。しかも値ごろによってFTFは売り戻され、現物市場に還流する。
 80年初頭と異なり、世界的にインフレ高進局面にはなく、米ドルも底堅さを保っている。06年1月末値が80年高値に遠く及ばないゆえんだ。
 プラチナはどうか。欧州中心に燃料効率のいいディーゼル車の人気が高く、それに伴なう触媒用需要の伸長に南ア中心の増産が追い付かないという実需索引型の上昇と評することができる。
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 前回当欄で「06年1月〜6月の金のレンジは490〜550ドル(平均521ドル)」というGFMS社の予測を紹介した。570ドル台が示現した現時点では控え目にみえるが、足元では需要の大宗であるジュエリー加工が減退しているはずだ。銀、プラチナの強さに追随する側面があるのではなかろうか。
■ 世界の産金トップ6
(単位トン、GFMS、05年推定)
@ニューモント(米国)    205

Aアングロゴールド・     
 アシャンティ(南ア)    192

Bバリック(カナダ9     169

Cゴールド・フィールズ(南ア)130

Dプレーサー・ドーム(カナダ)112

Eハーモニー(南ア)      79
 1月23日付の英紙ファイナンシャル・タイムスにカナダの産金大手、バリック社の創業者ピーター・ムンク会長のインタビュー記事が載っている。
 カナダ籍の世界3位の産金会社バリックが5位の同じカナダ籍プレーサー・ドーム社を104億ドルで買収したことを受けた記事である。
「金の上昇にもかかわらず産金会社の収益がぱっとしないのは@最近の鉱山ブームを受けた採掘設備費用の急上昇?鋼材とエネルギーコストの上昇A環境規制強化で環境コストが増加、などコスト圧迫による」
 「成長を続けるためには新鉱脈の発見が欠かせないが、未開発地域の多くは政情不安定で操業リストが高い。ラテンアメリカは有望だがボリビア、チリー、ペルーと左派政権が誕生、外国資本の受け入れには非協力的」
「結局、買収・合併によって鉱脈を確保、合併によるシンジー効果でコストを削減するのが最も効率的と考えている。これで合併話を打ち切りにするつもりはない」
 開発コストの上昇という増産への壁・非鉄金属、貴金属に共通する。
 早きに過ぎる上昇に調整はつきものだが、強力な下支え要因といえよう。 


17:40 訂正
■ 世界の金需給 (単位:d、GFMS調べ)

04年
05年
推定
前年比
04年
前半
04年
前半
05年
前半
05年
後半推定
06年
前半予測
05年
前半比
需 給
 
 
 
 
  
 
 
 
 
新産金
2,463
2,494
12%
1,173
1,290
1,180
1,313
1,236
4.7%
公的金売却
471
663
40.6%
194
277
423
240
238
-43.7%
回収金
834
840
0.8%
445
389
399
441
451
13.0%
推定投資家売却
77
-
n/a
47
30
37
-
-
n/a
供給計
3,846
3,997
3.9%
1,859
1,987
2,040
1,994
1,925
-5.6%
需 要
 
 
 
 
  
 
 
 
 
加 工
 
 
 
 
  
 
 
 
 
ジュエリー
2,618
2,739
4.6%
1,275
1,343
1,485
1,255
1,133
-23.7%
その他
553
573
3.6%
287
266
300
273
301
0.5%
加工計
3,171
3,312
4.5%
1,562
1,609
1,785
1,528
1,434
-19.6%
地金退蔵
248
263
6.2%
124
124
163
101
87
-46.4%
ヘッジ買戻し
427
195
-54.2%
172
254
92
103
118
27.9%
推定投資家購入
-
226
n/a
-
-
-
263
286
n/a
需要計
3,846
3,997
3.9%
1,859
1,987
2,040
1,994
1,925
-5.8%
価 格
ロンドン午後値決め
1トロイオンス:ドル
409.17
444.45
8.6%
401.04
417.17
427.37
461.25
521.00
21.9%

     (週刊 先物ジャーナル 第828号 掲載)