第 172回
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米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある


金高、投資主導が鮮明 ──GFMS最新需給報告書
 金が二進一退の形で強基調に復している。
 06年11〜12月半ばまでの金の棒上げを主導したのは東京工業品取引所(TOCOM)先物金への一般投資家の手ぞろい買いだった。臨時増し証拠金徴収で急反落したが、06年に入ると騰勢を取り戻し、ドル建て金は05年高値(ニューヨーク期近で12月12日の1トロイオンス544・5ドル)を軽々と越えてきた。
 金はなぜ強基調を取り戻したのだろうか。
 ナイジェリアの産油地帯で反政府軍活動による産出量急低下、核活動開始への西側制裁でイランが原油輸出を止める逆制裁に出るのではないか、といった供給不安を背景に原油が騰勢に転じた。
 史上最高値更新中の銅に次いで最高値を記録した亜鉛が大手産出国ペルーの鉱山労働者ストで上昇が加速、鉛(メキシコの鉱山スト懸念)、アルミ(エネルギーコスト上昇による減産懸念)も上昇に向けて足並みをそろえている。
 金は原油、非鉄金属高が反騰の手がかりになったフシがある。
 それにしても金の回復は早きに過ぎるのではあるまいか。こんな筆者の疑問に英国の調査会社、GFMS社の最新需給報告書「Gold Survey 2005 Update 2」がかなりの程度答えてくれた。
 19日に発行された報告書が届いたのは24日。早速辞書を頼りに読んでみた。
 まず、概要と展望のポイント。
● 05年、第4四半期に特に目立ったのは投資需要の盛り上がりで、上昇を主導した。高値にもかかわらず、加工需要は根強く下支え役を果たした。
● 06年の前半は投資需要は強さを維持しようが加工需要は500ドル超の水準では追随しにくく、底固めの局面となろう。
 GFMS社の06年前半予測レンジは490?550ドル(平均521ドル)
「次の上昇に向かう底固めの時期」という予測の根拠は「05年後半の金相場上昇を独り索引した形の投資需要はインフレ懸念、米ドル安予想などを背景になお高水準を維持するが、550ドルを超えて持続的に引っ張るのは力不足」という点だ。
「弱材料はまずジュエリー加工用の先細り。05年第4四半期、前年同期に比べ14%減った時期の金相場平均は484ドル。06年前半の500ドル超相場では24%減が予測される。ただ、インド、中国を中心に世界経済は拡大しており、500ドル以下には強い潜在需要がある」
「回収金、新産金とも06年前半増加が予想されるが、公的金売却は前半同期比で急減する。日本、台湾、中国など外貨準備高の多い国、地域が金準備積み増しに動くことは考えられないが、その他のアジア、中東などでは公的金積み増しの可能性がある。この結果、供給全般には圧迫感はない」
 GFMSの分析に従えば1月第4週の560ドル台は"あわ立った"部分があるという結論になる。
 需給ファンダメンタルズ相場(06年前半予想421ドル)に比べて、原油、非鉄金属高に同調する部分が20〜30ドル方上乗せされている勘定となる。
 
■ 世界の金需給 (単位:d、GFMS調べ)

04年
05年
推定
前年比
04年
前半
05年
前半
04年
後半
05年
後半推定
06年
前半推定
05年
前半比
需 給
 
 
 
 
  
 
 
 
 
新産金
2,463
2,494
12%
1,173
1,290
1,180
1,313
1,236
4.7%
公的金売却
471
663
40.6%
194
277
423
240
238
-43.7%
回収金
834
840
0.8%
445
389
399
441
451
13.0%
推定投資家売却
77
-
n/a
47
30
37
-
-
n/a
供給計
3,846
3,997
3.9%
1,859
1,987
2,040
1,994
1,925
-5.6%
需 要
 
 
 
 
  
 
 
 
 
加 工
 
 
 
 
  
 
 
 
 
ジュエリー
2,618
2,739
4.6%
1,275
1,343
1,485
1,255
1,133
-23.7%
その他
553
573
3.6%
287
266
300
273
301
0.5%
加工計
3,171
3,312
4.5%
1,562
1,609
1,785
1,528
1,434
-19.6%
地金退蔵
248
263
6.2%
124
124
163
101
87
-46.4%
ヘッジ買戻し
427
195
-54.2%
172
254
92
103
118
27.9%
推定投資家購入
-
226
n/a
-
-
-
263
286
n/a
需要計
3,846
3,997
3.9%
1,859
1,987
2,040
1,994
1,925
-5.8%
価 格
ロンドン午後値決め
1トロイオンス:ドル
409.17
444.45
8.6%
401.04
417.17
427.37
461.25
521.00
21.9%

●     ●     ●     ●
「中国の国家備蓄局(商品の政府備蓄機関)は24日、『各部門はその資金を"先物、株式、企業債、その他金融デリバティブ"に投じることを禁じる』とウェブサイトで声明を発表した。所属トレーダーは石油、銅、大豆などの買い付けに限定、デリバティブ商品に手を出すことは許されない」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(1月25日付)の記事の一部である。
 国家備蓄局のトレーダーが05年にロンドン金属取引所の銅を10万〜20万トン売り越し、推定1億ドルの損失を出したとされ、この中国売りが国際投機資金の銅買い進みのひとつの根拠となっていた。中国当局はトレーダーの関与説を否定していたが、今回の声明は銅投機の損失を間接的に認めたことになる。
 中国トレーダーの銅相場失敗はなにに起因するか、は定かでないが、中国の加熱引き締め策が銅相場の値下がりを呼び、在庫の評価減につながるとみたヘッジ売りに始まったという見方がある。その一方で在庫に見合うヘッジの範囲を越え、オーバーヘッジという名の売り投機に及んだという説もある。損を取り戻そうと売り建てを増やして損がみるみる膨らんでいく、というプロセスだ。
 中国当局が今回備蓄トレーダーによる先物市場への関与を禁止したのはなぜだろうか。現物仕入れに限定したとしても値下がり損のリスクは残る。先物市場の持つヘッジ機能を知らぬわけではあるまい。まさか現物仕入れなら、巨大なバイイングパワーに物を言わせ、値下がり局面では契約破棄に走ればいいと考えているのでもあるまい。
 そういえば日本でも商品先物市場で商社によるオーバーヘッジという名の過当投機説が絶えない。
 投機は個人であれ、法人であれ、同一の条件にある、というのが大原則のはずだ。

     (週刊 先物ジャーナル 第827号 掲載)