商品の時代、息長く
2006年も商品の時代が続く。
「商品の時代」という表現はアドベンチャー・キャピタリスト(冒険資本家)といわれるジムロジャースが05年に出したホット・コモディー=i日本語訳書では商品の時代=jという書物から広く用いられるようになった。
1980年代、90年代とほぼ20年にわたる商品相場の低迷期を抜け出し、21世紀入りとともに底入れから上昇に転じた商品は05年、歴史的高値、十数年振り高値という高値の記録ラッシュとなった。原油、銅は史上最高値を高進している。
で、06年に商品の時代が引き継がれると予測する理由の第一は需要増に供給増加が追い付かない点である。
「メタルの価格が低位にあった90年代、供給拡大策を目論む鉱山経営者はその座を追われ、非拡大策を唱える金融マンに取って代わられた。その守りの姿勢こそが今日の高値を招いている」
英紙ファイナンシャル・タイムス(12月21日付)のプレシャス・メトルと題する金特集記事にあるジム・ロジャースのコメントである。
タイトルは不確かな熱狂とでも訳すべきだろうか。ジム・ロジャースは80年代初頭の高値で供給を急拡大し、調整の20年を経てその轍を踏むまいという拡張への脅えが、金高を招いた主因と指摘、銅、鉛、亜鉛など非鉄金属も同様と説いている。
● ● ● ●
原油も全く同様の構図にある。米国の石油がぶ呑み体質は変わらず、中国、インドの経済拡大に伴なうエネルギー消費は高水準が続く。油田を探し、開発に着手し、原油が産出するまでに長い期間を要し、しかも巨額の資金を要する。供給天井は当分低いまま。だとすれば原油は1バレル50〜60ドルの高止まりが予想される。
06年、高止まる原油が広範な国際商品を下支え、押し上げる方向に働く。
高止まる原油の強気発信の経路を考えてみる。
| ◆ 原油、強気発信の経路 |
|
・ コストプッシュ→基礎的エネルギー源である石油の高値は農産物から非鉄金属まで幅広い商品の生産コストを押し上げる。
・ 精錬過程でエネルギーコストがかさむ非鉄金属、貴金属などの値上がり要因となる。特に電力の塊とも評されるアルミへのインパクトは大きく、05年ドイツ、フランス、スイスなどのアルミ精錬会社はエネルギー費用次第では操業停止も考慮していると伝えられる。
・ 代替エネルギー源→原油が長期的に高止まると見方が定まるにつれ、カナダのオイルサンド(タールサンド)、ベネズエラの超重質油など、非在来型資源開発計画が動き出す。
・ 砂糖、トウモロコシなど原油とするエタノール(アルコール)の生産にも拍車がかかる。既に世界一の産糖国であるブラジルは食品(砂糖)用とエタノール用が相半ばしており、エタノール、ガソリン費用の自動車販売が急増している。原油が1バレル30ドル以上ならエタノールはガソリンよりも価格競争力があるといわれる。
・ 石油原料の素材と競合する商品の競争力が強まる→石油原料の合成ゴムが上がれば天然ゴムも押し上げられ、石油原料の化学繊維の上昇は天然繊維原料(綿花、羊毛)の強材料となる。
・ 燃料効率志向が需要増加要因となる→欧州中心にディーゼル車の増産が進んでいるが、ディーゼル車用触媒素材としてプラチナの需要が増えており、2001年以来の需要超過が05年も続く。
・ インフレ懸念が芽生えインフレに弱いボンドなど金融商品からモノである国際商品への資金シフト→金、銀、プラチナなど貴金属を先頭に幅広い国際商品に買い人気が伝播していく。 |
● ● ● ●
06年も商品の時代が続くという前提に立つと商品先物業界にはどのように影響を与えるだろうか。
まず、ずばり商品先物の投機妙味を求める顧客拡大の基盤となる。値下がりにも値上がり同様、収益機会が開かれているのが先物のウリではあるが、値上がり差益追求の方が少なくとも入りやすい。日常生活では買い物の体験はあっても、売り物の体験はない。古くから相場の世界には「天井三日、底百日」という棒上げ相場のはかなさを説く格言があるように、需給の枠組みを飛び出した買い人気の反動は大きく、売り妙味を否定するわけではない。
が、入り口商品として貴金属を考えれば、買いから入れば、損切り以外、現引きして長期戦に備えるという手もある。
次いで、オプションで商品先物の買いポジションをヘッジすることができる(金、粗糖、大豆)。オプション利用客の拡大の機会となる。
さらに商品ファンドの顧客層が広がっていく。商品の時代とあれば、ファンド組成者があらかじめ選んだ商品を買いローリングしていく、インデックスタイプのファンドの好パフォーマンスが見込まれる(前記ジム・ロジャースのファンドは買いのローリング)。
デフレの時代が去り、インフレの芽生えの時代という見方に立てば商品の買いローリングファンドはインフレへの備えの商品という性格を持つ。
「商品の時代」は「商品先物業の業容拡大の時代」でもある。
|